誰にも言わずにここに置く

誰にも言わないけど留めておきたい、内省と個人所感メモ。というか主に愚痴。

図書館職員の給与が少ないというニュース

図書館司書の給与が低いというのが、少し前から話題だ。

それに対して、厳しい意見も多い。

利益を出す事業でないから当たり前とか、

安いと知っていて就職したんだろうとか、

そもそももう図書館は必要ないとか。

 

図書館利用が少ないから不要だというのは、

つまり、本を読まない文化を育ててしまったということだ。

自動車が登場して馬に乗らなくなったとか、

エアコンができて火鉢は使わなくなったとか、そういうのと違う。

図書館の代替となるほど充実したデジタルコンテンツはない。

単に、本を読まなくなっただけのことだ。

 

本から得られるのは知識だけでない。

他者を思いやる心や、自分が知らないもの、見えないものへの想像力を養い、

理解が及ばないものを尊重できる力、

目先の自分だけの損得にとらわれず、広くより良い道を考える思考の持ち方など、

豊かな人間性を育む上で重要な役割を果たしている。

 

本なら何でも良いというわけではなく、どういう本に触れるかが

特に子どもたちにとっては重要で、

そこで大きな役割を果たすのが司書だ。

いわゆる「良書」に類されるものを厳選して仕入れ、提供する。

 

もちろん児童書に限らないが、時代的なニーズと普遍的価値、

学術、文化などの他面から書籍・資料の収集と提供を行う図書館の役割は

ほかに代わるものがない。

 

本を読まない文化が育っているということは、

自分ファーストの、目先の快・不快、損得といった

利己的な視野の狭い人間が増えていくんだろうと案じている。

理で諭せないから罵倒する、手を上げる。

そういう人は、周りでも見かけないわけでもない。

 

 

公共だからとか、そもそも給与安いと知ってたろうとか、

だから我慢して当然というような声もあるが、

なぜ、我慢させようとするのだろう。

まあ、この件に限らずだけど、

自分も苦しいし我慢してるからあなたも苦しみなさいと足を引きたいのか。

その人の給与が上がると、自分の手取りが減るのか。

税金が上がると心配してるのか。

そんなの、もっと文句をいいたい無駄遣いが山ほどあるんだから

そっちに文句を言えばいい。

 

そもそも日本は教育にお金をかけなさすぎる。
科研費が総額2400億円と聞いてびっくりした。

少ない。

理系にしろ文系にしろ、そりゃあ研究レベルも下がるわと思う。

図書館だって、もっと人に潤沢に予算を割けたら、

利用促進や読書を習慣づけるような取り組みを広く展開できるはずだ。

読まないから要らないんじゃない、

読まない人たちを作ってきてしまっているのだ。

「本なんか読まねーよ」と言っている人は、

自分で読まないと思ってるけど、そうじゃない。

「読まない人」へと育てられたのだ。

 

いったい日本の人たちは、将来や幸福というものに対して、

何を思い描き、求めているのだろう。

教育をないがしろにするのは、

肥料を与えずに作物を育てるようなものだ。

なかには水と太陽で、充分育つものもある。

けれど養分が十分でないと、

育ったけど美味しくない、固くて食べにくい、小さな実しかならない、

そういう結果になりやすい。

 

社会に生きる以上は、誰もが他者と関わらずに生きられない。

自分が出会う人たちが、尊敬でき、信用できる人であってほしいと願えば、

教育や読書は外せない要素のはずななのに、

それをどんどん細らせて、

官僚の出来が悪いとか、ひどい教員がいるとか、とんでもない客が来たとか。

 

自分も至らないだらけの人間だけど、

まあ、そういう自己反省も含めて、

豊かな人間性が育つ教育が、もっと潤沢な予算で行われてほしいと

つくづく願う。